聴く力
- 2022年11月23日
- コミュニケーション
いつもブログを読んで頂いて有り難うございます。
大阪府泉佐野市「しまだ健やかクリニック」院長の島田です。
昨今世間で「○○力」という書籍が流行っていますね。
今回は当院で最も大切にしている「聴く力」についてお話しします。
皆さまは「話しを聴いてもらった。」と実感されたことがお有りですよね。
どんな時にそう感じられたでしょうか?
話したいことを全部話せた時でしょうか?
相談したことにぴったりなアドバイスをもらえた時でしょうか?
ちょっと違いますよね。
いくら話しを聞いてもらっても相手が「うん、うん。」と黙っていては
「ちゃんと分かってくれているのかな?」と不安になりますよね。
アドバイスをもらえると有り難いものの、アドバイスが欲しくて
話しをしているわけでない時もありますよね。
相手に「自分の気持ちや立場を理解してもらえた。」時こそ、
「話しを聴いてもらった。」と感じられるのではないでしょうか。
そして、あれ?と気づかれた方は鋭いです!
「聞く」と「聴く」はちがうのです。
「聞く」は受け身として文字通りただ聞こえているだけです。
一方、「聴く」は注意深く耳を傾けることを言いますが、
実は二段階に分かれます。
まず話し手の気持ちや感情、何を伝えたいのかを理解しようと推測します。
次にその推測が正しいのか、「あなたの言いたいことはこういうことですか?」
と正しく理解できているか話し手に確かめます。
「聴」という漢字を眺めてみましょう。
耳+目、心から出来ていますね。
「耳だけで無く、話し相手の様子を目で観察し、心で相手の気持ちや
考えを推し量る。」という態度を表していると思いませんか。
ご自身の気持ちや感情を理解してもらった時はどんな気持ちでしたか?
「この人にはまた相談しようかな。」
「きっちり理解してくれるから一緒に過ごしやすい。」
相手への信頼感が高まり、安心できた方が多いと思います。
特に良い、悪いといった評価をされずに、ただ受け入れ認められた時は
心の緊張がほっと緩むのを感じられたのではないでしょうか。
病気で体調が悪いとき、どうなってしまうのか不安でいっぱいのとき、
病気の辛さや不安を理解してくれる人が周囲にいると心強いですよね。
また、職場でもお互いの立場や気持ちを理解しあえる同僚と
仕事が出来るのは楽しく心地よいものです。
「聴く力」のメリットはご理解頂けたと思いますが、
正しく聴く(共感するとも言います。)のは実は簡単ではありません。
こちらが話そうとしては、「分かった、分かった。こういうことでしょ。」と
ひと言発する間にも話しを遮って決めつけられたことはありませんか?
頭の回転が速く、せかせかした方によくみられます。
「相手のことを理解できたら良いんでしょう。早ければなおよし。」
と言われます。
でも、ちょっと待ってください。
話しをちゃんと聴かずにどんどん推測する場合、
よりどころとするのは聴き手の価値観や経験です。
そして、聴き手の価値観に合うかどうか評価してしまっています。
先ほど評価されないことが安心につながるとお話しましたが、
これと大きく食い違ってしまいます。
「聴く力」を磨くためには、まず自分の価値観や経験を脇に置いて、
真っ白な気持ちで話しを聴くことが大切です。
また、「うん、うん。私も同じ目にあったから分かるわ。
私の時はこんなだったの。大丈夫、どうにかなるわよ。」
となぜか相手の体験を聞かされて終わったこともありませんか?
これは同感し聴き手の経験からの安易な保障で終わっています。
「私とあなたは違うのに、そんな簡単に言わないでよ。」
という気持ちがむくむくとわき出ますよね。
「聴く力」には話し手と同じ体験をし、同じ感情になる必要はありません。
あくまで話し手の気持ちを理解し、正しく理解できているかを
確かめるために伝え返す、ということに専念するので良いのです。
これは、癌末期の患者様に携わるスタッフの燃え尽きを防ぐために
大切なことでもあります。
一生懸命親身にご家族と一緒に患者様に寄り添っていますと誰しも
感情が芽生え、亡くなられた時のショックは大きいです。
一歩ひいて眺めることができれば、自身を守るだけでなく、
大切な方を失われたご家族の嘆きを包んであげることもできます。
「聴く力」を磨くには、まず真っ白な心で、
最後まで相手の話を聴き、
私の理解で合っていますか、と伝え返す。
これを日々実践するのみです。
間違っていても、すぐに「いや、こういうことです。」と
正しい理解を話し手が教えてくれます。
自転車やピアノの練習と同じで「習うより慣れろ。」ですね。
当院に写真を掛けております我が家の猫ミャオとガオとも練習しています。
「眠たいの?」「ミャア。」「お腹空いたの?」「アオン。」
「撫でて欲しいの?」「ミャ。」「ミャ、ミャァ!」「違うと。」
「外に出るってことね。」「ミャオン。」(ご機嫌に縁側へ出る)
当院にはさまざまな患者様がいらっしゃいます。
お一人お一人の人生、性格は当然異なります。
病気の辛さや苦しみはご本人にしか分からない、
完全に理解できることは難しいことかもしれません。
また複数、多職種のスタッフが働いております。
それぞれの思いや経験、家庭まで含めた環境は千差万別です。
しかし、少しでも安心し信頼して通って頂く、働くことが
できる環境を目指して日々スタッフ全員で「聴く力」を
高めております。
また院長のライフワークとして「聴く力」を高める
動機づけ面接法のトレーニングを各地で行っておりますので
ご興味をお持ちの方はご連絡ください。