そんなうまい話しってある?
- 2022年11月21日
- 食事療法
いつもブログを読んで頂いて有り難うございます。
日根野駅前の糖尿病内科「しまだ健やかクリニック」院長の島田です。
先日複数の患者様から食事について質問やお話を頂きました。
「YouTubeで白ご飯より焼き飯の方が糖尿病の人には良いって見ました。」
「醤油ラーメンより豚骨ラーメンの方が血糖値には良いんですか?」
「糖尿病食のお弁当でご飯をどれだけ食べても良いものがあるんです。」
糖尿病や肥満症では食事療法が基本となりますが、
沢山の患者様が積極的に情報を見つけ、取り入れられようとされていて、
ご自身の健康を大切に考えておられると感心しております。
一方で世の中には様々な情報があふれていて、どれが正しい情報なのか、
悩まれている患者様も多くおられます。
特に感覚的に「本当なの?」と思うような人目を引くタイトルのものが
SNSやマスコミで取り上げられています。
それでは、例に挙げた内容の真偽はどうでしょうか?
「焼き飯が白ご飯より良い」「豚骨ラーメンが醤油ラーメンより良い」は
食後の血糖値の上がりが緩やかになるので良いとの主張です。
これは一部が正しく、一部が間違っています。
まず栄養素と食後の血糖値の関係を少し説明します。
3大栄養素の炭水化物、たんぱく質、脂質のうち炭水化物は即効性のある
エネルギー源となります。
スポーツ選手が試合前にバナナを食べるのは消化吸収が早く、
試合中にエネルギーとして直ぐに使えるからなんですね。
たんぱく質や脂質には胃の動きをゆっくりにする働きがあり、
よりゆっくりと消化吸収されます。
私達は食事を摂ると大体食後1~2時間で血糖値が上がってきます。
この血糖値の上昇は炭水化物によるものです。
たんぱく質は食後3~5時間、脂質は4~10時間で血糖値をあげてきます。
穏やかにと言うと聞こえが良いですが、ノロノロ、だらだらと
血糖をあげ続けるのが脂質です。
さて、焼き飯、豚骨ラーメンに共通するのは油(脂質)を多く含むことです。
もう皆さまお分かりだと思いますが、焼き飯や豚骨ラーメンが
食後血糖の上がりを抑えるのは油(脂質)が胃の動きを抑えて、
ゆっくり食べ物を吸収させるからです。
では本当に「糖尿病や身体に良い」のでしょうか?
良いはずはありませんよね。
油は取り過ぎると太ってしまい、インスリンの効きが悪くなりますし、
ラードや豚の脂といった飽和脂肪酸は膵臓自体を痛めてしまい(脂肪毒性)、
長期的には糖尿病が悪化してしまいます。
高脂血症や動脈硬化が進んでしまう弊害もでてきます。
昨今血糖値の動きが可視化できる持続血糖モニターを利用して、
食べ物の血糖値への影響が目で見えるようになりました。
食後の血糖値を抑えることは動脈硬化、心筋梗塞のような
心臓の致死的な病気を予防するのに大切です。
しかし、食後の血糖値だけの動きに目を奪われてしまうと、
「木を見て森を見ず。」になりかねません。
「○○さえ食べれば、後は何をどれだけ食べても大丈夫。」
これも良くあるキャッチフレーズです。
皆さまも「そんなうまい話しがあるかな?」と思われるとおり、
そんなうまい話しは食事療法には残念ながらありません。
糖尿病の食事で、健康に良い食事と言い換えられると思いますが、
大切なのは、さまざまな栄養素をバランス良く摂ることです。
食べてはいけないものはありません。
偏りなく、食べ過ぎ、食べなさ過ぎにだけ気をつけるだけでOKです。
ご飯や麺類を食べ過ぎると血糖値が簡単に上がりますし、
おかずを食べ過ぎると太ってしまって最終的に血糖値もあがります。
手っ取り早いものは食事療法にはありません。
一方で「何を食べても良いんだ!」と旬のものや好きなものを楽しみながら、
量とバランスを意識して、食事療法へのストレスを軽減して頂くのは
いかがでしょうか。
私達の「健康になりたい、でも今の生活を変えずに手軽になれたら楽だな。」
そんな気持ちにつけこむような、
目を引く、刺激的な情報や広告があふれかえっています。
しかし、多くは前述のように都合の良い結果のみを取り上げ、
最終的な健康への科学的な効果検証はなし、有害に働く可能性すらあります。
背景に商業的な意図があるのも否定できないでしょう。
当院では患者様がご自身で情報収集される健康への思いを大切にし、
患者様が正しい情報を選び役立てて頂けるお手伝いをして参ります。
「○○を試したいけれどどうですか?」と疑問がありましたら是非お気軽に
ご相談ください。