インスリンが効かない!?|しまだ健やかクリニック|泉佐野市日根野の内科・糖尿病内科・漢方内科

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インスリンが効かない!?|しまだ健やかクリニック|泉佐野市日根野の内科・糖尿病内科・漢方内科

インスリンが効かない!?

いつもブログを読んで頂いて有り難うございます。
泉佐野市の糖尿病内科「しまだ健やかクリニック」院長の島田です。

開院し2週間が経ち、インスリンを自己注射されている多くの患者様が当院への転医を希望あるいは先生方からご紹介頂き来院して下さいました。
「インスリンを打っているのですが血糖値が下がらないのです。」
「血糖値の変動が大きくて、どうなっているのか分かりません。」
と悩まれている患者様が何人もおられました。

「打っても血糖値が下がらない。」「血糖値の変動が大きい。」という言葉でピンとくることがあります。
そんな時は患者様のお腹を見せて頂き、どこに普段注射されているか指さして教えて頂きます。

典型的なお腹が写真のようなものです。
おへその両側少し下にぽってりとした膨らみがあることに気づかれますでしょうか?
「ここに右、左と毎回打ち分けているよ。」とおっしゃられる患者様が多いです。
そしてフリースタイルリブレの日別血糖変動や血糖自己測定ノートを見せて頂くと、
同じ時間帯でもある日は血糖値がグッと下がり、
ある日はあたかもインスリンを打っていないかのように血糖値が全く下がらずに
逆に上がっているというようなバラバラな動きをとっています。

実はこの膨らみがインスリンの効きを悪くしている元凶なのです。
これはインスリンを同じような部位(お腹でも太ももでも)に繰り返して打っていると出来てきます。
一つはリポハイパートロフィーといって皮下の脂肪細胞がインスリンに繰り返しさらされることで増大し、柔らかい膨らみとなったものです。
もう一つはインスリン由来アミロイドーシスといって注射されたインスリンがアミロイド蛋白となって皮下に沈着してしまったものです。
まるでボールのように触れるので「インスリンボール」とも呼ばれます。
どちらも注射を続けていると痛みが少なくなり、ついつい的のようにそこへ打ってしまうのですが、
インスリンの効きが悪くなり、血糖コントロールが不安定になってしまいます。
特にインスリンボールはインスリンを絡め取ってしまい、インスリンがほとんど吸収されないことが報告されています。
(Nagase T, et al. The insulin ball. Lancet. 2009 Jan 10; 373(9658):184.)

インスリンボールに絡め取られる分を増やさなければインスリンがちゃんと吸収されないので
インスリンの注射する量(単位)が増えていくのが一般的です。
そして、ある日はインスリンボールへインスリンを注射してしまいインスリンが体内に吸収されず高血糖、
ある日はインスリンボールからずれた正常部位に注射することでインスリンがしっかり吸収され、
インスリンボール分過量となったインスリンが効きすぎて低血糖と、非常に激しい血糖値の変動となってしまいます。
その結果低血糖でしんどくなったり、日常生活に支障をきたす患者様がおられます。

患者様ご自身でチェックする方法としては鏡に向かって裸で立って頂いて、優しく指先でいつも注射をしている部位を触ってみてください。
写真のような下ぶくれや何か周りと違う違和感を感じられた場合はインスリンボールやリポハイパートロフィーが出来ている可能性があります。

対処法としては3ヶ月~半年はその部位への注射を避けて頂くことです。
リポハイパートロフィーは自然と柔らかくなって、その部位へのインスリンの効きも戻りますが、
インスリンボールは厄介で柔らかくならずに、その部位へ打つのを避け続けて頂くこともよくあります。

もう一つ気をつけなければならないことは、インスリンボールに気づかれ正常の部位へ注射を打つ時にインスリンを減量する必要があることです。
前述しましたが、インスリンボールに絡め取られる分インスリン量が増えてしまっている方が多く、
正常部位へ打つと効き過ぎて低血糖を頻発してしまう恐れがあります。
当院で見つけた場合は減量が必要か判断してお伝え致しますし、ご自身で見つけられた方も是非当院へご相談ください。

医療者の皆さまへお伝えしたいことは、できれば定期的に患者様のお腹のチェックをお願い致します。
インスリン注射歴が長い、血糖変動が大きい、低血糖を急激に起こすことが多い、インスリンの単位量が妙に多い、がインスリンボールの形成を疑うサインです。
「ちゃんと場所を変えて打っていますか?」と訊くだけでは「変えて打っていますよ。」という返事で見逃してしまいます。
実際にお腹を見せて頂いて、どこに打っておられるのか指さして頂くのが大切です。
インスリン注射の跡が集中していたり、触ってみて少しでも違和感があると疑いましょう。


当院ではカレンダー打ちといって、お腹の上の方からカレンダーのように横へ毎回1横指ずつずらしてインスリンを注射し、次はその一段下へ降りるという打ち方を推奨しております。
一番左下まで到達したら、また一番右上まで戻るという繰り返しです。

当院はインスリンボールの撲滅を掲げています。
患者様が痛みや手間、医療費といったご負担にもかかわらず、ご自身の健康のために毎日打っておられる注射が安全にかつ有効に役立つお手伝いをさせて頂きます。