漢方内科
漢方内科
「身体がしんどいのだけど、病院で調べても異常が無いから様子をみてと言われて困っています。」、「西洋薬を飲んでいるけれど、今ひとつスッキリせず毎日辛いです。」、「副作用で西洋薬を飲めず、症状はあるしでどうしたら良いのか悩んでいます。」
このように症状があっても西洋医学的に臓器に器質的な異常が無い場合(例えば胃腸の動きが悪い)や自律神経失調症のような西洋医学が不得意あるいは西洋医学の治療で症状が改善しない場合、そして心と身体の症状がリンクしているような場合などに漢方治療が有効なことがあります。
漢方は中国から中国伝統医学が伝わり日本で独自の発展を遂げた医学です。自然界に存在する植物の花や種、根、茎や石膏のような鉱物、牡蠣の貝殻に至るまでさまざまな生薬を複数組み合わせて作られています。何千年という治療経験の中から効果と副作用の有無を調べ取捨選択されて体系化されたものですので、自然の恵みと先人の知恵を利用した医学と言っても良いかもしれません。
体系化された医学であるため、健康増進が目的であるサプリメントや民間療法とは異なり漢方薬は治療効果のある医薬品としてきちんと保険診療で認められています。西洋医学では病気を診断し、病気のメカニズムに応じた西洋薬を処方しますので切れが良く、治療効果も証明されており現代の治療で無視することはできません。一方で一つ一つのメカニズムに応じて西洋薬を処方されることが多く、足し算のようにいつの間にか沢山の薬を内服していることは少なくありません。漢方薬は複数のメカニズムが絡み合っていても身体や心に現れている症状に対して処方しますので、漢方薬を飲むことで複数の症状が同時に改善し、西洋薬を減らせる場合があります。当院では保険診療での漢方治療を行っており、また西洋薬を減らせる可能性がありますので漢方治療は高いとイメージをお持ちの方でも実は医療費を抑えられるかもしれません。
また、漢方治療は心身のバランスの乱れが病気に発展していくという未病の考え方があり、この未病の段階で漢方治療を行い、病気を回避し健康で楽しい人生を過ごせる手助けをするという予防医学的な一面も持っています。
内科、婦人科、皮膚科、整形外科など、診療科目は関係なく全ての身体や心の症状を対象としています。現在掛かられている他院での治療を続けていただきながら当院での漢方治療を受けていただくことが可能ですので、なんでもお悩みがある方はぜひ一度ご相談ください。
身体や心に関係する症状は全て漢方治療の適応となります。
一つだけでなく幾つか該当する場合こそ漢方治療が役立つかもしれませんのでお気軽にご相談ください。
かぜ、咳、胸のつかえ、息苦しさ、動悸、胃痛、胸焼け、食欲低下、胃もたれ、便秘、下痢、頭痛、めまい、疲れ、全身倦怠感、むくみ、肥満など
更年期障害(のぼせ、発汗、肩こり、不安、不眠、イライラなど)、月経困難症(頭痛、むくみ、冷えなど)、月経不順・月経痛、過多月経、月経前症候群(情緒不安定、めまい、頭痛、便秘、腰痛など)、乳腺炎、肌荒れ、不妊症など
関節痛、頚や肩こり、捻挫、骨折の痛み、足の攣り、腰痛、足のしびれなど
気分の落ち込み、イライラ、色々と不安でたまらない、パニック障害、自律神経失調症、不眠、認知症に関連する症状など
じんましん、にきび、しみ、いぼ、爪がもろい、乾燥肌、アトピー性皮膚炎、かゆみ、抜け毛、円形脱毛症など
排尿トラブル(頻尿や残尿感)、尿路結石、冷え症、男性更年期症候群、虚弱体質など
まず、患者さまの症状によって漢方治療に先立って西洋医学の専門診療科を受診いただくことをお勧めすることがあります。近代の治療効果の改善、健康寿命の伸びは西洋医学の発展をなくしてあり得ません。患者さまが何にお困りか、どのような症状かを丁寧に伺い、科学的根拠に基づいた切れよく根治可能な西洋医学が役に立つと判断した場合には西洋医学でしっかり検査、治療を受けていただきながら、漢方治療を併用させていただくことが患者さまにとって一番と考えております。
漢方薬というと長期にわたって内服し、ゆっくり症状や体質が改善するイメージが一般的かと思います。多くはそうですが、西洋薬同様に切れの良い速効性がある漢方もあります。飲まれた方はご存知かもしれませんが、足を攣った時に飲む芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)やインフルエンザの時に飲む麻黄湯(まおうとう)などが代表格です。同じ症状でも体質に合わせて飲む薬を変えることができるのも漢方治療の長所です。逆にいうと、同じ症状でも様々な漢方薬が治療薬の候補として考えられますので、一つの漢方薬で効果がなくとも色々な選択肢が残されており、諦めることなくじっくりと患者さまに寄り添いながら患者さまに合った漢方薬を一緒に見つけさせていただきます。
西洋薬では足し算の処方が多く、必要であるものの内服薬が多く増えてしまいます。漢方薬はすでに複数の生薬を組み合わせてあるため複数の症状に対して効果が期待できるところが利点です。一方で漢方薬を複数内服しすぎても「船頭多くして船山に上る」のように効果が薄れてしまうとも言われていますので、当院では長期に内服いただく漢方薬は基本的に2剤としておりますので、薬が増えることに対する患者さまの不安を軽減できると思いますし、前述のように西洋薬を減らせる可能性も秘めておりますので安心して受診いただければ幸いです。
漢方治療のハードルとして真っ先に考えられるのが飲めるかどうかです。当院では基本的にエキス製剤を処方しております。エキス製剤とは生薬を抽出分離し乾燥させたもので、インスタントコーヒーをイメージすると分かりやすいかもしれません。漢方薬の正しいかつ飲みやすい方法は意外と知られておらず、漢方薬を直接口に入れてから水で飲まれて「飲みにくい。」「口の中にいつまでも味が残って不快。」というお声をよく聞きます。順序を逆にしていただいて、口にまず水か白湯を含んでおいて漢方薬を一緒に飲むと口に残りにくく味や香りが抑えられます。またオブラートに包んで飲む方法も勧められています。当院では少量のお湯に溶かしてから薬膳スープのように飲んでいただくこともお勧めしています。
漢方薬を内服していただくタイミングは食事の影響が少ない食間や食前30分~15分前が最も効果を期待できるのでお勧めしております。生薬からできている漢方薬は食事の成分により効果が弱まるなど影響を受ける可能性があるからです。とはいえ、忙しい日常生活で飲む暇がなかったり、飲むタイミングを忘れてしまったりすることは十分考えられます。そんな時は食後の内服でも効果は期待できますので構いません。患者さまご自身が飲めるタイミング、ペースに合わせた診療を行っております。
漢方薬は西洋薬が副作用で飲めない方でも飲んでいただける場合がよくあります。一方で漢方薬も薬である限り副作用が全くないわけではありません。なかでも一定量の甘草(かんぞう)が含まれる漢方薬を長期に内服された場合、足のむくみや血圧が高くなってくる偽性アルドステロン症という病気を引き起こしてしまうことがあります。こむら返りによく処方される芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)は特に1日3回内服しますと甘草の量が多くなり発症リスクが高まります。血液検査でカリウムの数値が下がることも特徴ですので、当院では漫然と処方を続けるのではなく、定期的にカリウムの値を検査するなど注意を払い、適正な治療を行っております。
漢方薬の中には胃が弱い方には少し刺激になってしまう成分が含まれているものもあります。患者さまの体質に合わせて治療を提案させていただきますが、合わなかったり飲めなかったりしても当院では治療を強制することは決してありません。患者さまの心や身体は患者さまが一番ご存知であると考えておりますし、一つの処方にこだわる必要がなく沢山の選択肢があるのも漢方治療の良さですので、患者さまご自身が感じられたことを安心してお伝えください。