睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群
「寝ても疲れがとれない。」「昼間眠くて仕方がない。」「いびきがうるさいと家族に言われる。」「夜間の睡眠中によく目が覚めてしまう。」「朝起きた時に頭痛がしたり、口の中がカラカラに乾いている。」こんな方は睡眠時無呼吸症候群かもしれません。
皆さん、一度息を止めてみてください。何十秒か我慢しているだけでも胸がドキドキしてきて、早く息を吸いたいと息苦しくて顔も赤くなってくるのではないでしょうか。このとき指先にパルスオキシメーターを付けていると動脈血の酸素飽和度(SpO2)は当初の98%前後から90%前半に落ちているかと思います。逆に言うと酸素飽和度が90%まで低下するととてもしんどいことなのです。
睡眠時無呼吸症候群では中には80%前半まで酸素飽和度が下がってしまう患者さまがおられます。意識があると酸素を吸わないと到底耐えられないレベルにまでなっているのに睡眠中なので気づくことができないのです。睡眠中に息が止まったあと、もがくように深く大きく息を吸って、を繰り返すのはそれだけ酸素濃度が低くなって無意識化でも苦しくなっているからです。これが毎晩繰り返されるのですから身体は休むことができず、様々な症状、合併症が出てきてしまいます。
睡眠時無呼吸症候群(SAS : sleep apnea syndrome)は、寝ている間に息が止まっていることを繰り返す病気です。10秒以上気道の空気の流れが止まった状態を無呼吸とし、1時間あたり5回以上無呼吸があれば睡眠時無呼吸症候群とされます。いびきをかいて苦しそうに息をする閉塞性睡眠時無呼吸(OSA : obstructive sleep apnea)と、そうでない中枢性睡眠時無呼吸(CAS : central sleep apnea)があります。最もよくみられるのはOSAで、ここではOSAについて説明させていただきます。
寝ている間に起こっているため、いびきを家族に指摘されないと気づかないことも多いこの病気、実は怖いことが分かっています。睡眠時無呼吸症候群は高血圧や心筋梗塞、不整脈といった心臓病、脳卒中、糖尿病などの合併症を引き起こし、これらの合併症により突然死される患者さまもおられます。また睡眠時無呼吸症候群によっておこる日中の眠気は判断力や集中力の低下をきたし、交通事故や作業中の事故につながってしまいます。「いつもの眠気」「いつものいびき」と放置していると知らない間に身体をむしばんで突然死を来したり、悲惨な事故を起こしてしまう恐れがあるということです。「もしかしたら?」という方は簡単な検査で調べられますので是非ご相談ください。
睡眠時無呼吸症候群になられる患者さまは一般的に上気道(鼻から喉頭)にかけての径が小さいことが分かっています。顎や顔の形、舌の容積、扁桃肥大といった原因もありますが、最も重要なのが肥満による首や喉まわりへの脂肪沈着です。
起きている間は喉が呼吸しやすいよう上気道を広げるように呼吸に合わせて舌の筋肉を中心に筋肉が動いてくれています。睡眠中は筋肉が緩むため、上気道が狭くなってしまい無呼吸が起こってしまいます。
肥満が最大の危険因子であり、10%の体重増加が1時間に15回以上無呼吸がみられる中等症睡眠時無呼吸を発症するリスクが6倍になることが分かっています。
症状以外でも前述したように高血圧、心不全や心筋梗塞、不整脈といった心臓病、脳卒中、糖尿病、脂質異常症の発症や増悪と関連することが睡眠時無呼吸症候群の危険なところです。
息が止まることで低酸素・高二酸化炭素の状態になってしまい、何度も睡眠中に起きてしまうことなどによって交感神経活性が亢進することが大きな原因です。寝ている間だけなく、日中も交感神経系が亢進することが知られています。交感神経が活性化すると心臓にアクセルを踏むような働きをさせるアドレナリン(カテコラミン)が多く分泌されて、血圧が上がったり、ドキドキと脈が速くなったり、不整脈が引き起こされたり、心臓が直接痛んでしまいます。
特に高血圧の合併率は高く、夜間に血圧が低くならないタイプの夜間・早朝高血圧となることが多いという特徴があります。また3剤以上の降圧薬を飲んでも血圧が正常化しない高血圧の約7割に睡眠時無呼吸の合併がみられると言われています。一方で睡眠時無呼吸症候群をCPAP(continuous positive airway pressure)療法で治療すると血圧が低下することがわかっています。
ご自宅でできる簡易モニター検査と、専門の医療機関に一泊して行う精密検査(終夜睡眠ポリグラフ検査:PSG検査)があります。
精度の面では精密検査が優れていますが、精密検査は手間とコストが掛かるため、CPAP療法が適応となる重症あるいは中等度の睡眠時無呼吸症候群の診断には簡易モニター検査を代わりに用いることが勧められています。
当院ではフィリップス社のウォッチパット300を採用しています。一般的な簡易モニターでは鼻にチューブ(鼻カニューラ)をつけて寝ていただく必要がありますが、チューブが気になって眠れなかった、睡眠中にずれてしまって正確に検査できなかった、というような弱点がありました。このウォッチパット300は鼻カニューラを用いずに検査できるのが特長です。
ウォッチパット300の検査方法は簡単です。機器は業者から患者さまのご自宅に郵送されます。一晩、寝るときに装着し、返送していただきます。
後日、当院で解析結果を説明させていただきます。
CPAP療法、OA(oral applianceマウスピース)療法、減量、鼻・咽頭での気道開存手術(口蓋扁桃、アデノイド摘出)などがあります。
日中の眠気などの症状が強い患者さまや中~重症の患者さまにまず勧められる治療です。CPAP療法の原理は睡眠中の無呼吸を防ぐため、鼻に装着したマスクから空気を送り続けて気道を開存させておくというものです。効果はエビデンスで証明されており、4時間以上毎晩使用していると高血圧や心筋梗塞など心血管イベントの改善、日中の眠気の改善、交通事故のリスク低下と様々な改善が報告されています。
当院ではフィリップ社のドリームステーションを使用しています。
基準を満たす患者さまは健康保険を使って月毎に機械のレンタルができます。患者さまのご自宅へご都合に合わせて業者が設置しにきてくれます。
またコンパクトかつ軽量ですので旅先へ携帯していただくことも可能です。
当初は違和感があるかもしれませんが、マスクを調整し慣れてきますと「朝起きた時のスッキリ感が違う!」「夜中に目が覚めない。」「もう手放せない。」と喜んでいただける患者さまが多くおられます。レンタルなのでいつでもキャンセルいただけますし、適応のある患者さまにはメリットを実感していただければとお勧めさせていただいております。
肥満のある患者さまには減量にも取り組んでいただいております。減量することで無呼吸が減り、心血管疾患のリスク、高血圧、糖尿病といった合併症も改善することが分かっています。減量に成功されてCPAP療法を卒業される患者さまもおられます。
料金表ページをご参照ください。
いかがでしたでしょうか?睡眠時無呼吸症候群はもしかして、とご自身あるいはご家族が疑っていただいて初めて検査、治療と進むことができる病気です。当院では診療を通じてその発見から治療まで一貫して患者さまの手助けをさせていただきます。お気軽にご相談ください。